激辛薬味『みまから』を通して発信。田舎から元気を!
2012年4月24日 (火)
美馬交流館
徳島県美馬市美馬町字西荒川24-1
逢坂満さん
徳島県美馬市美馬町の美馬交流館で加工販売される「みまから」は、地元美馬地方で古くから栽培されてきた辛くて細長い品種の「青とうがらし」を主原料に用いたのが特徴だ。
この青とうがらしは「みまから唐辛子」と呼ばれ、もともとは同町一帯の各家庭で栽培されてきたもので、ハウス栽培ではなく太陽の恵みを十分に受け取った、いわば地域の特産品としての顔を持つ。
■■収穫は時間との戦い■■
収穫は7月から9月いっぱいまで。猛暑の中でくりひろげられる作業は、みまから唐辛子が一番辛くなる赤く熟する寸前に狙いを定めひとつずつ丁寧に摘み取られていく。収穫時期は辛味がピークをむかえる頃というわけだ。「みまから」は生産者に厳しい作業を求めるが、その分だけ向き合う生産者は真剣そのもの。唐辛子は熟し始めると半日で真っ赤になる、収穫は時間との戦いでもある。
収穫後は「みまから」の加工販売施設「美馬交流館」へ直ちに運ばれる。きれいに洗じょうされた細長いみまから唐辛子の両端を数センチ除く。上部は表皮に厚みがある為、下部は辛味が少ない為等々、1本の青とうがらしの中にも独自の使用基準があり目を光らせている。輪切りにし、胡麻油で炒め、鰹節、みりん、醤油等々で味付けをする。そしてあの風味豊かな激辛薬味が“阿波の逸品”として誕生するのだ。
辛味の強い唐辛子を加工しているためか、工房は慣れていない私たちが入ると涙が出るほどの辛味を含んだ空気で満ちている。全てが手作業の為、加工するのも大変で根気が必要だ。
唐辛子の辛味成分であるカプサインはからだの中の脂肪を消費、からだをあたためることで冷え対策にも効果があることは広くマスコミにより知れわたっているところで、健康面からの視点も欠かせない。
■■2%へ向けた挑戦■■
今までに美馬交流館へ届いたみまから体験者からの声の中には辛すぎるというものが5件もっと辛くして欲しいという要望が2件あったそうだ。
「辛いのを好む人は人口の2%。」
人口の2%しかいないからこそアプローチしてみる価値があると逢坂氏は言う。
その2%の人へ向けた商品作りにも手抜きはない。
作業効率化という名の下に手を抜くことはいくらでもできるし、たくさん商品を作ろうと思えば持ち込んでもらえるみまから唐辛子を全て使えばいい。
でも、それだけはしたくないという強い気持ちがそこにはある。
はじめに手に取った商品より品質が落ちると消費者の方は必ず気付く。良いものを厳しい基準で作っているからこそ自信を持って商品をお届けできるのだ。商品に対する絶大的な自信はそういう真摯な姿勢から生まれている。
自分自身が納得して口に入れられるものを届けたい。
その思いからみまから唐辛子の使用部分などの作り方をはじめ、作業の時間帯など工房では独自の基準で管理されている。
また、原料のみまから唐辛子は支援センターの栽培指導による技術の習得や向上をもとに、生産者組合と協力しあうが、ここにも工房同様厳しい自主基準があり、求める品質のハードルは高い。時には、契約栽培農家の指定をはずす決断をすることもあるという。
厳しい自主基準を設けているのにはそれだけ強い信念が貫かれているからだ。
そして、それは「みまから」というブランドを大切にしている証とも言える。
■■元気のある田舎づくり■■
「みまから」には「美馬から元気発進」、「美馬の辛味」と二通りの意味があり、活力のある元気な田舎づくりを目指している姿が2011年9月7日「NHKふるさと一番」でもとりあげられた。
1983年の町づくりボランティアグループ結成以来28年間展開してきた様々な活動の集大成として、7年前からみまから唐辛子を使った特産品作りが始まり、新たなる産業おこしを夢見て農商工連携による取り組みが進んでいる。
2007年から加工販売を手がける美馬交流館代表の逢坂満氏は「みまからは地域活性化の起爆剤。ブランド化による農業の発展や雇用の拡大につなげられたらいい」と話す。地域おこしにかけるそのまなざしはやさしく熱い。
地元の三頭山と吉野川(四国三郎)をモチーフにした徳島県立美馬商業高校デザインのロゴマークの採用など地域と密着した活動や県内外の高校生の体験学習の場としての役割を果たすことによる地域活性など、その思いはぴたりと重なり合う。
大きな志のもとに、みまからを通して地域の賑わいづくりに励んでいる。
人・物・情報の交差点としての美馬交流館の重要性は増すばかりだ。