ウミガメの町のやさしいお菓子に込められた豊田屋さんの想い。
2009年10月 5日 (月)
有限会社 豊田屋
徳島県海部郡美波町奥河内字寺前93
牧野人実さん
2009年9月スタート朝のNHK連続テレビ小説「ウェル かめ」の舞台、毎年ウミガメが産卵に訪れる町、徳島県美波町。四国八十八カ所二十三番札所薬王寺の門前で昔から地元の方々に親しまれている豊田屋さんを訪ねた。
「ウェルかめ」放送開始まで1ヵ月に迫ったこの日の町は、予想よりも落ち着きがあり、のんびりとした空気が漂っていた。これからこの町が「ウェルかめ」を通じて盛り上がりを見せると思うと心が弾んだ。
豊田屋さんは牧野さんの祖父豊田庫二郎さんが大正十年頃創業され、現在牧野さんの弟さんで三代目。美波町(日和佐)のお土産をはじめ地元の方々からも愛される和菓子を作り続けられている。
牧野さんから様々な商品の誕生にまつわるお話を聞かせていただいた。
■■地元の素材を羊かんへ■■
創業して一番初めに創られたのは「青のり羊かん」だったそうだ。
当時、豊田屋さんの近くを流れる日和佐川では良質の青のりが採れていた。青のりは真水と海水が混ざったところで良いものができると言われている。きれいな海ときれいな川の水が混ざった日和佐川の河口は良い青のりができる最適の環境だったのだろう。
そんな良質の青のりを独自の製法で羊かんに練り込んだのが「青のり羊かん」だ。もちろん青のりは日和佐川で採れたものを使っていた。
しかし、だんだん日和佐川の青のりが手に入りにくくなるにつれ、手に入る各地の青のりで作らざるを得なくなってしまった。
そんな時、たまたま見ていたテレビ番組で徳島の川内漁協で吉野川の青のりを扱っていることを知り、徳島(吉野川)で青のりが採れるのならば徳島のものを使うべきだ、やっぱりこだわりを持った商品作りをしていきたい、そんな考えのもと牧野さん自らが漁連へ足を運び、交渉して羊かん用に青のりを分けてもらうことになったのだという。
最近では日和佐の青のりを復活させようという動きもあり、美波町の取り組みとしてバイオを使って青のりの栽培が進められている。
より地元のものを使いたいという強い思いから、現在ではこの日和佐産の青のりを使用しているそうだ。
地元の人は日和佐では良い青のりが採れるというイメージが定着している。だからこそ「日和佐産の青のり」を使った青のり羊かんでアピールしたいのだ。
■■職人の技が光る亀の玉子■■
豊田屋さんにはウミガメにまつわるお菓子が数種類ある。
日和佐の中学校の先生がウミガメの研究を始めたことにより、日和佐ではウミガメの研究・保護が盛んになった。
海沿いのグランド・関連施設などは、夜はライトをつけてはいけない。海岸周辺の道路は 夜になると諸車進入禁止等々ウミガメの保護が徹底されており、日本で最もウミガメの保護に力を入れているといっても良いという。現在では徳島県内外からウミガメの町として認知されている。
そんなウミガメの町ならではのお菓子を作りたいという気持ちからできたお菓子の一つが亀の玉子だ。
ウミガメの玉子のような、ピンポン玉くらいの大きさのお菓子は作れないだろうか?そんな発想から誕生したお菓子は、白いマシュマロ生地の中に少しお酒の利いた甘酸っぱいあんずジャムが入っている。
どれも同じ大きさにそろっているように見えるが、実はすべて職人さんの手作りなのだ。よく見ると大きさは揃っているようで少しずつ違う。
機械を導入するという話もあったそうだが、マシュマロという柔らかい生地の性質上、機械ではどうしてもうまく作れなかったという。
季節によって生地の固さが違うので勘も要求される。蒸し物もある和菓子の厨房は夏場といえども冷房は入れられない。暑い時期はマシュマロも柔らかく、中にジャムを入れるのが難しい。逆に冬場はすぐに硬くなってしまうので、手早さが要求される。 ひとつひとつほとんど同じ大きさに作られているのは、職人でないと作れないまさに職人の技が光る逸品だ。
中身のジャムは何度か改良されたこともあったが、柔らかすぎて生地に染み込んでしまったり、地元の根強いファンから味が変わったと指摘があったりと、いろいろな苦労があったという。より美味しく、より良いものを作りたい。改良を重ねた結果、現在はベースのジャムは昔と変わらず、そこに違うジャムを加えることで味を豊かにしている。
■■ネーミングに込められた想い■■
やわらかくて甘すぎず口当たりも良い、男性にも好まれるお菓子。千羽嶽が誰にでも好まれるようなポピュラーなお菓子として作られた理由はネーミングに隠されていた。
千羽嶽(千羽海崖)は日和佐港の南西に続く断崖絶壁の海岸で室戸阿南海岸国定公園特定保護地区であり、海から見た景色は豪壮・雄大。
この景色に感動し、もっとたくさんの人に知ってもらいたいと作られたのが千羽嶽だ。
たくさんの人に知ってもらうには、たくさんの人に好まれるお菓子でなければならない。誰にでも好まれるポピュラーなお菓子にはそんな気持ちが込められていた。
名前からお菓子の中身が想像できないがゆえに、初めての人には手に取ってもらいにくい商品でもある。しかし、リピーターが多いのも千羽嶽の特徴だ。
千羽嶽に込められた想いの通り、今ではたくさんの人に好まれるお菓子となっている。徳島県内ではお菓子の名前として知っているが、千羽嶽の景色は知らないという人もいるだろう。
■■守り続けるということ■■
「祖父母たちが良いお菓子を創ってくれているので、残してくれたお菓子をただ守り続けているだけですよ。」とおっしゃる牧野さん。
ご両親を早い時期に亡くされ、弟さんと力を合わせて守ってきた。弟さんは職人として、牧野さんは販売・お店の顔として。
ただ守るといっても簡単なことではない。守り続けるには努力も必要だ。
「地元でお店を開いているだけでは商品は売れません。色んなところに出品して、色んなところで売ってもらうことが大事なんです。よいお菓子には必ずリピーターがつきます。リピーターのお客様がいるからこそ守り続けていくことができるんです。」牧野さんが日々の販売で思っていることを話してくださった。
また、常に周りにアンテナを伸ばして、お客様がどういうものを望んでいるのかを敏感に感じ取ることも大切だ。
牧野さんのアンテナが生んだエピソードがあるそうだ。
納品先で商品を陳列している時、お土産を購入されているお客さんの会話が耳に入ってきた。「これ買っても、どこのお土産なのか分からないよね。」そんな会話をヒントに、商品名に地名などが入っていない商品のパッケージに「徳島のお土産」というシールを貼ってみた。それだけで売上は伸びたという。
「こうしたら良くなるかもしれない。」「お客様はこういうものを望んでいるのかもしれない。」思いついたらすぐに試してみる。牧野さんの行動力・チャレンジはまだまだ尽きない。
お話を聞かせていただいて、豊田屋さんのお菓子が地元の方をはじめたくさんの人に支持されているのは、牧野さんをはじめとする豊田屋さんの皆さんの美波町(日和佐)への愛が溢れているからだとひしひしと感じた。
地元の素材にこだわり、名前や形で地元をアピールした様々なお菓子。高齢化が進んで閉店する店が多くなって地元を盛り上げていこうとする姿。ただお店を守るということではなく、その先に繋がっていくことが本当にたくさんあった。
取材の後、牧野さんから紹介していただいた「うみがめマリンクルーズ」で千羽海崖の絶景を見に行く予定だったのだが、残念ながら強風のため船が欠航になってしまった。
お菓子の名前にまでして広めたいと思うほどの絶景。今度改めて見に行きたいと思う。もちろん、帰りのお土産は千羽嶽をはじめ豊田屋さんのお菓子で決まりだ。
▼豊田屋さんの青のり羊かん ご購入はこちら▲
▼豊田屋さんの亀の玉子 ご購入はこちら▲
▼豊田屋さんの千羽嶽 ご購入はこちら▲
豊田屋さんより、ひわさ散策絵地図、日和佐ぼちぼち観光ガイド、うみがめマリンクルーズのパンフレットを頂きました。豊田屋さんの商品ご購入の方で、ご希望の方先着20名様にプレゼントいたします。
上記パンフレットは、美波町のお店や道の駅などで無料配布されているものですが、特にひわさ散策絵地図は人気が高く手に入りにくい状況になっているそうです。地元の人しか知らないようなことなど情報もいっぱいで見ているだけで楽しくなる絵地図です。
地図を見ながら、ウェルかめの世界を想像してみてはいかがでしょうか。