生産者の皆さんに学ぶ
Top > 生産者の皆さんに学ぶ

« 2009年4月 | 記事一覧 | 2009年10月 »

2009年7月

2009年7月 8日 (水)

市岡製菓さんに聞く!なると金時芋きんつば、ロングヒットの秘密。

Ichiokaseika  市岡製菓株式会社
 徳島県徳島市勝占町中山39-12
 営業部/森真希さん(左写真/中央)
        栗本えりかさん(左写真/右から2人目)
        向井真紀子さん(左写真/左から1人目)
        吉田恵子さん(左写真/左から2人目)
        戸川聡さん(左写真/右から1人目)

 発売から3年あまり、ロングセラーの大ヒット商品「なると金時芋きんつば」の開発秘話を聞かせて頂けるということで、市岡製菓さんを訪ねた。

 国道から少し入った山際に建つ工場。
 お菓子の製造が覗けるようになっている、甘い香り漂う階段を3階まで登りきったところに、商品の企画・営業の中心となる営業部商品政策課・商品企画課の事務所がある。ここで日々、様々なお菓子が企画・開発されているのだ。
 事務所を訪ねると「なると金時芋きんつば」の商品企画を担当された森さんが笑顔で迎えてくださった。


■■なると金時芋100%のきんつば開発への挑戦■■Img_08302_3
 市岡製菓さんは地元徳島の素材を生かしたお菓子作りに力を入れている。
徳島の素材にこだわり地元の農家さんと手を組んで、安心・安全な商品作りを続けている会社だ。
 もちろん、なると金時を使ったお菓子も、その中のひとつである。
 主力商品のなると金時のスイートポテトに続く2番目の柱となるような、多くの人に愛される商品を作りたい。
 それが「なると金時芋きんつば」開発のスタートだったという。

 なると金時らしい商品を作りたい。なると金時の素材の味を大切にしたお菓子を作りたい。開発をする上で、真ん中にしっかりとしたぶれない芯が通っている。
なると金時できんつばを作ることはそう簡単なことではなく、試行錯誤を繰り返し、様々な問題をクリアしながら作られたのだ。

 なると金時は小豆や手亡に比べて固まる成分が少ないそうだ。
 小豆や手亡は豆を炊いた時点で寒天を入れるときれいに固まるが、なると金時ではそう上手くはいかない。なると金時のみで作られた餡はつるっとしていて固まっても柔らかく、生地を塗っても生地が付きにくいのだ。
 白餡を混ぜれば固まりやすくなり生地の付きも良いが、白餡の味に邪魔されて、どうしても芋の味が薄くなってしまう。

 なると金時の餡のみで作りたい。なると金時の味を最大限に生かしたお菓子を作りたい。それだけは譲れなかった。
 他社では見たことのない「なると金時100%」の芋きんつばにこだわったのだ。

 また、こだわりは「なると金時100%」だけではなかった。
 味はもちろん、固さや周りの皮にもこだわった。和菓子職人が作るきんつばに負けないものを作りたい。試作は何度も繰り返された。

 普通きんつばは白い生地に包まれているのだが、この芋きんつばは少し黄色味がかっている。実は、皮にもなると金時をつぶしたものと芋の粉を練りこんでいるのだ。その結果、他のきんつばにはない香ばしさが楽しめるようになった。
 この生地のバランスや微調整に約半年はかかったそうだ。


■■パッケージに表れるこだわりと自信■■
Imokintuba  商品開発の際、開発チームを2つに分けたのだという。商品の中身を開発するチームとパッケージデザインを考えるチーム。
 商品の中身を森さん、パッケージデザインを栗本さんを中心に開発が進められた。
 共通する強い想いのもと、チーム間でアドバイスをしながら、時には競い合いながら開発が進んでいった。

 ゆえに、パッケージにもこだわりが見える。商品がシンプルなだけにパッケージも味がストレートに伝わるものにしたい。色々な案が出されたが、結局決定したのは商品説明も何もなく、商品の写真と商品名が書かれているだけのシンプルなものだった。

 説明なしで、とにかく食べてみて欲しい。商品に対しての自信がパッケージにも表れているように感じられる。

 また、発売当初は「鳴門金時芋きんつば」という商品名だったが、現在は「なると金時芋きんつば」と商品名の表記が変わっている。「なると金時」は地域団体商標であり、決まった地域で作られたさつまいも(なると金時)を使用しないと表記できない。「なると金時」と表記することは、なると金時ブランドを使っている証なのだ。

 なると金時の芋ペーストに寒天を入れ、冷やして固める。固まったら四角くカットして生地を塗って6面すべてを焼く。
 製造工程がシンプルなだけに、なると金時の素材の味も重要になってくる。
シンプルな芋の味にこだわった商品だからこそ原料も良いものを使いたい。
 原料のなると金時は主に地元の農家の方から分けて頂いている。直接トラックで取りに行くこともあるという。農家の方から頂いたなると金時を使って自社で芋ペーストを作るシステムは従来から確立していたのだ。
 このようにして原材料の生産者から消費者まで顔の見える仕組みで、安心・安全な商品の提供が実現している。


■■徳島から全国へロングヒットの秘密■■Imokintuba_2
 商品の販売の際は見た目が小さいので、バイヤーの第一印象は弱かったという。しかし、ひとつ食べてもらえれば商品の大きさよりも味の良さの評価が高く、気に入ってもらえることの方が多かった。
 味の評価は抜群で大きさは関係なく量より質だと感じる方が多いようだ。

 関東では芋ようかんなどの芋文化が根付いていて受け入れられやすい環境だったこと。芋きんつばが効率悪いものとされ、流通市場にあまり出ていなかったことも影響し、リピーターが多くロングヒットに繋がった。

 また、なると金時は全国のバイヤーが買いたい地域ブランドランキングで全国4位になったこともあり、全国的に高級食材として認知されている。
 「なると金時を使ったきんつば」という、パッケージを見るだけでどんな商品かすぐわかるのも手に取ってもらいやすいのだろう。
 現在、関東を中心に全国的に流通され「なると金時芋きんつば」を通じて徳島県が全国にPRされている。 

 「美味しいもの」を皆さんに提供するのは当たり前のこと。「美味しい」にプラス「素材を生かす」などのスパイスを加えることが大事なのだと森さんは言う。
 徳島県だから作れるお菓子。徳島県でしか作れないお菓子。
 なると金時が原材料で一番多く入っているのも魅力の一つだ。これだけふんだんになると金時を使っているにもかかわらず低価格に抑えることは普通はできないのだ。

 森さんも栗本さんも口をそろえて「この子は問題児というか・・・・本当に苦労させられた子でしたね」と語ってくださった。やはり、苦労させられた分だけ愛着も強いそうだ。
 お二人とも自分たちが開発したお菓子を自分の子供のように「この子は」と自然に話しているのがとても印象に残った。

 地元の素材なると金時からはじまり、ハッサク・やまもも・ゆず・すだちなど徳島県の自然を生かして育まれた素材から様々な商品がどんどん開発されている。
 地元の素材がどんな素敵なお菓子に変身するのか楽しみであり、今後も市岡製菓さんから目が離せない。

▼市岡製菓さんのなると金時芋きんつば ご購入はこちら▲



Copyright(C)2009 有限会社西川商店. All Rights Reserved